デザインセンスを身につける
- 作者: ウジトモコ
- 出版社/メーカー: ソフトバンククリエイティブ
- 発売日: 2011/09/20
- メディア: 新書
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第二章 なりたい自分をデザインする技術
第三章 プレゼンはデザインで勝負
第四章 デザインでブランドが育つ
第五章 デザインがわかると未来が見える
TwitterやFacebookのアイコンからデザインとブランディングの重要性を解説するというのは新鮮で、実際のアイコン画像を例に黄金比や三分割法などを説明されているのは、すごくわかりやすかったです。
その他にも京都のマクドナルドの看板の色やGoogleロゴといった事例をあげつつ、デザインやブランド、そしてそれによってもたらされる世界観の重要性をわかりやすく説明されていました。
ただ本筋とは関係ないですが、気になったところがこちら。
『視覚マーケティングのススメ』が発売された2008年当時、東京ミッドタウンのアートディレクションなどを手がけた有名アートディレクターの水野学氏が著作『グッドデザインカンパニーの仕事1998-2008』の中で、「マーケティングは立ち読み程度で」と、デザインとマーケティングの強い関連性そのものを否定する発言をされていました。影響力の強い、有名アートディレクターのこの発言に象徴されるように、当時はデザインが「マーケティング」や「ビジネスコンセプト」とはまったく次元の異なる「神聖」なものという意識を持つ人も少なくなかったはずです。「デザインセンスを身につける (ソフトバンク新書)」(P150-151)
水野氏の本は以前読んでいたのですが、「デザインとマーケティングの強い関連性そのものを否定する発言」なんてしていたっけ?と気になりました。個人的には著作を読む限りでは、水野氏はアートディレクターという立場でありながら商品の企画やプランニング、さらには企業の経営戦略にまで関わっているような方で、「マーケティング」や「ビジネスコンセプト」を否定的にはとらえていないという印象でした。
というわけで『グッドデザインカンパニーの仕事1998-2008』を引っ張りだして、それらしい記述を探してみると下記のような記述がありました。
マーケティングは立ち読みで?
広告の仕事に関わっている以上、時代の空気には、常に敏感でいたいと思っています。
どこでそれを感知するか。俗っぽく思われるかもしれませんが、私の場合、それは、コンビニエンスストアやテレビ番組です。
コンビニでは、雑誌が並んでいる棚を右から左へと総ざらいしていきます。女性向けのファッション誌から男性向けのスポーツ誌まで、どんどん立ち読みする。面白そうな記事が載っていると、その場で購入します。自宅では、テレビをつけっぱなしにしています。ニュース番組はもちろん、ドラマやバラエティ番組も、なんとなく眺めている。
いわゆる「ミーハー」。しかし、そうやっていると、「いま、こういうものが流行っているんだ」とか「この人が人気あるんだ」といった同時代のディテールが、自然と蓄積されていきます。
ただし、ただ漫然と情報に触れることは避けています。これは昔からの癖でもあるのですが、常に、考え続けています。「なぜなのか?」と。
(中略)
「なぜ?」を考えることは、「センスの更新」にも役立ちます。さまざまなセンスを理解できれば、仕事上、ターゲットへのアプローチを考えるのも容易になります。
自分のリアルな感覚だけで判断しきれないと、つい、データに頼りたくなります。けれども、いわゆるマーケティングは、あまり過信しないようにしています。あくまでも個人的な見解ですが、マーケティングというフィルターを通すと、抽象化されてしまう部分がある。しかし、統計的な処理を施したことでこぼれ落ちてしまったものの中に、大きなヒントが隠されているような気がするのです。「グッドデザインカンパニーの仕事―1998‐2008」(P104-105:太字は原文)
…マーケティングを否定しているととれますかね? 水野氏はマーケティングの重要性をふまえた上で、アートディレクターの立場として、マーケティングではとらえきれていない部分をデザインの力で支えようとしているのだと私は感じました。
つまりウジ氏も水野氏もスタンスはほとんど同じなのではないかと思います。
ついでに『グッドデザインカンパニーの仕事1998-2008』をパラパラ読み返してみたらこんな文章が。
優れたデザインの条件
「アートディレクション」の項目で、以下のように定義しました。
アートディレクションに必要なのは、物事を俯瞰から見渡し筋道を作る「広く見る」力であり、デザインに必要なのは、あらゆる細部を検証し精度を高めていく「深く見る」力であると。
言い換えると、アートディレクションとは「仮説を立てること」であり、デザインとは「それを研究し、実証すること」と表現できるかもしれません。デザインにとって、感覚的なひらめきは、とても重要なものですが、それを扱うときは、仮説ー研究ー実証というプロセスが必要だと思っています。
デザイナーに求められているもの。それは、科学者のような冷静な態度で、細部と全体の整合性を、地道に検証していく姿勢です。
デザインは表層を飾るものだと思われがちですが、正確には、それだけではありません。私は、デザインをふたつに分けて考えています。ひとつは「機能性と結びついたデザイン」もうひとつは、「装飾を目的としたデザイン」です。
(中略)
一般に、デザインという言葉からイメージされがちなのは、後者。しかし、このどちらが欠けても、デザインは成立しません。
機能をふまえた上で、それが洗練されたものになっているかどうか。その見え方はブランドイメージから導きだされているかどうか。更に、商品単体だけでなく、広告や販売のあり方まで含め、世界観がきちんと構築されているかどうか。
このような関係性が、破綻することなく、有機的に連携しているもの。それが、優れたデザインなのです。
(後略)「グッドデザインカンパニーの仕事―1998‐2008」(P126-127:太字は原文)
これって「デザインセンスを身につける」で述べられている事と同じようなことを述べているのではないでしょうか。
- 作者: 水野学
- 出版社/メーカー: 誠文堂新光社
- 発売日: 2008/11
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