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印刷とそれ以上の何かについて(少し電子書籍寄り)。気が向いただけでは更新されません。

縦書きテキストを美しくジャスティファイするために(概論編)

EPUB3の特徴として挙げられる縦組ですが、webkitの対応も進み、「text-align:justify;」で行頭行末揃えも表示されるようになりました。ただ何も考えないでジャスティファイを使うと、組版にこだわりのある方から「段落の最後の行だけ詰まって見える」と指摘されてしまう可能性があります。というわけでcssで行頭行末揃えをする際に現状気をつけておくといいと思うことをまとめてみます。*1 まあ、結論を先に言うと「行長指定重要」ということなのですが。

なお、縦書きのcss指定については「草枕を作ろう =縦書きHTML簡単作成ガイド=」あたりを参考にしてください。

「段落の最後の行だけ詰まって見える」ってどういうこと?

まずは見ていただくのが手っ取り早いと思いますので、InDesignで作ってみました。わかりやすいかと思って国構えの漢字を並べてみましたがどうでしょう。

最初の3行に比べて最終行が詰まって見えるのがわかるでしょうか? でもこれは正確には最終行が詰まっているわけではなく、それ以外が広がっているのです。

ここでジャスティファイを解除して、行頭揃えにしてみます。

すべての行の文字間がきれいにそろいました。ですが、そのかわりに最初の3行の下部にスペースができています。
この例では文字サイズは16pxで行長(ブルーの枠の高さ)は適当にキリのいい数字として140pxを指定しています(それを150%拡大表示してキャプチャ)。そうすると1行には8文字は収まるけど12px余ってしまいます。ジャスティファイとは、その余った部分をそれぞれの文字間に適当に割り振って、行末を枠の端にくっつけようとする処理です。

どれくらいずれているか、マス目(InDesignのフレームグリッド)を重ねて表示されてみましょう。

ジャスティファイを指定した状態でどれくらいずれているかわかるでしょうか。勘のいい方はわかると思いますが、このずれを解決するためには、ブルーの枠の高さをマゼンタの枠と同じ高さにすればいいのです。そこで148pxから128pxに変更したのが下の画像です。


cssでどのように指定するか

InDesignで作ったサンプルで説明してきましたが、これをcssでどう指定するかというと、そのテキストの領域(段落等)の行長を「文字サイズ×1行の文字数(字詰め数)」にします。*2

例えばfont-size:1emで1行10文字の場合、height(multi-column layoutの場合はcolumn-width)に10emを指定します。

p {
    writing-mode: vertical-rl;
    -webkit-writing-mode: vertical-rl;
    -epub-writing-mode: vertical-rl;
    font-size: 1em;
    height: 10em;
    text-align: justify;
}


……が、現状はそううまくはいきません。というわけで続きます。

*1:この文章は縦書きベタ組みを前提にしており、詰め指定に関してはcss実装を確認していないので考慮しません。また禁則処理や和欧混植処理についても複雑になるので無視します。

*2:組版にこだわりのある方はこのあたりのざっくりした説明に目くじらをたてることのないようにお願いします。

販促EXPOで興味を引かれたところ

先日東京ビッグサイトにて行われた販促EXPOほかに行ってきました。そのうち話を聞いたり資料もらったところをリストにまとめたのですが、せっかくですのでこちらでこっそりと公開しておきます。

《資材・機材》

[http
//paper.tomoegawa.co.jp/:title=新巴川製紙](A8-25):耐水性レーザープリンタ用紙
[http
//www.jicworld.co.jp/photobook/:title=ジャパンインターナショナルコマース](A18-13):卓上フォトブック製本
[http
//broadcaster.co.jp/:title=ランスロットグラフィックデザイン](A7-34):立体POP、吸着ターポリン
パックロード
CD型ジグソーパズルプリンタ用紙
[http
//www.obun.co.jp/keserushi/index.html:title=欧文印刷](A11-15):ホワイトボード用紙

《什器》

[http
//www.paperworld.jp/:title=ペーパーワールド](A1-21):紙製スマホカバー、段ボール什器
[http
//www.ecoland.ne.jp/:title=ウラノ](A10-6):エコボード什器
アドサイクルプロジェクト(A5-41):紙素材販促ツール]
[http
//www.passot.co.jp/:title=passot](A3-22):立体POP
[http
//www.howay.com/:title=豊栄産業](A5-42):段ボールディスプレイ
[http
//pop-asahi.jp/:title=アサヒドリームクリエイト株式会社](A5-42):スチレンパネルPOP

《印刷サービス》

[http
//www.asanoseihanjyo.co.jp/:title=浅野製版所](A5-34):什器、ノベルティ
グラフィッククリエーション
Tシャツ、iPhoneケース
[http
//mekurunenga.com/index.html:title=フタバ](A21-21):圧着式年賀状
[http
//www.albumehon.co.jp/:title=アルバムえほん](A23-13):フォトブック

《グッズ・商材》

[http
//www.license-tech.com/egrips/:title=ライセンステクノロジー](A1-10):滑り止めシール egrips。印刷込みの発注とのこと
大日紙業 メモ工房
ブロックメモ
[http
//itanocw.co.jp/:title=板野紙工](A3-12):紙製ノベルティ
[http
//www.silkyact.jp/silkyact_memoreruclearfileinformation_top01.html:title=シルキーアクト](A1-33):メモれるクリアファイル
[http
//kusunoki210.jp/:title=KUSUNOKI](A9-2):はがセロ封筒
[http
//calicotokyo.com/:title=キャリコ](A10-34):クレジットカード型USBメモリ

《その他》

[http
//pitcom.jp/business.html:title=ピットメディアマーケティングス](A9-37):フォトモザイク
[http
//www.yamaha.co.jp/news/2011/11070501.html:title=ヤマハ](A6-22):サウンドサイネージ

Digital Publishing Suiteエージェンシー版?

「Hutte」のデジタル化は事例として紹介されていましたが、雑誌と同時発行ということのようです。記事を読んでわかることとしては、

  • 企画段階でデジタル版を想定して、それを見据えた取材方法、企画立案が必須となる
  • 紙媒体用のInDesignデータを元にできるとはいえ、パノラマ画像やムービーなどは取材の際にちゃんとデジタル版を想定して準備しておく必要がある
  • 大日本印刷はすでに制作体制を整えている

というあたりでしょうか。想像するだけでも通常の雑誌発行に比較して、編集者、デザイナー、オペレーターなど全員の仕事が必要以上に増えてるんじゃないかと心配です。今回は季刊ですが、これ月刊誌とかではワークフローをうまく構築しないとたいへんそうです。雑誌版のデータを印刷会社に入校した後、休む間もなくデジタル版の制作に追われるとか想像したくない…。そのうえiPad、GalaxyTabなど画面サイズの異なる素材をそれぞれ作るとかなった日にゃ…。

APDSに関して

同記事でのAPDSに関して既報も含めて列挙すると、

  • サービス提供開始は7月下旬
  • Professional版とEnterprise版の提供が予定
  • プラットフォーム利用費は年間60万円(月5万円)
  • 発行できる媒体数・アプリケーション数に制限はなく、サポート料と年間5000ダウンロード分のサービス費を含む
  • 超えた分については、年間契約でダウンロード数に応じたダウンロードパッケージを購入
  • 2万5000ダウンロードまでが62万5000円、2万5000ダウンロードまで425万円、50万ダウンロードまでが700万円
  • 電子書籍を単体アプリとして作成し、マーケットプレイスなどを通じて独自に販売する場合にはサービス費はかからない
  • 直接販売せず、代理店経由で販売
  • Enterprise版は、出版社の自社運営やサードパーティのサイトが利用できるようにカスタマイズできる。すでに自社コンテンツの販売サイトなどを自社で運営しているような大手出版社向け
  • 大部数発行時のディスカウント、自社運営サイトでの決済を利用するためのAPI提供などはEnterprise版のみの機能
  • Adobe SiteCDatalystとの統合はProfessional版でもサポート
  • 契約者が第三者の制作工程を請け負い、サービスを代行する形態のエージェンシー版の提供を検討中。広告代理店や印刷会社などの利用を想定

ということろでしょうか。Adobeのサーバ経由ではないダウンロードには料金が発生しない(5000ダウンロード分はもともと年間60万の中に含まれていますが)ということは単体アプリ形式に関しては個別費用はかからないということのようです。ProBridgeとかがいくらするのか知りませんが、これくらいかかるのでしょうか?

詳細は未定ながら、エージェンシー版というものもでるようです。Professional版との差が不明なので何とも言えませんが、もともとProfessional版も出版社が用意するのか制作会社が用意するのか今ひとつ不明だったりするので、さらに混乱しそうな気もします。大日本印刷はどれなんだろう? 制作フローのスライド見る限りは、出版社が契約していればここの制作会社やデザイナーはアカウントがなくても制作作業はできるようですが…。

前回も書きましたが、個人的にはEPUBのほうが導入コストが低いので、そちらに関心が移ってきているのですが、まあもう少し注目していくことにします。なんていいながらFolio Producer toolsもまだインストールしていないのですが。

Digital Publishing SuiteはCS5でも作成可能

本日、某所で某氏の電子書籍セミナーに参加してきました。今週発売のInDesignCS5.5に関してということで、多少フライング情報もあるかもしれないので詳細を述べるのは控えておきます…。

今回いちばんの情報は、APDSの作成ツールがCS5でも使用可能で、アドビのサイトからダウンロードできるようになっているということでした。「Folio Producer tools」という名称で、CS5用、CS5.5用がダウンロードできるようです。CS5.5でも追加インストール?

AdobeLabsでのベータ版ではAIRアプリだったInteractive Overlay Createrが、InDesign組み込みになったのは情報が伝わっていたのですが、もう一つのAIRアプリであるDigital Content BundlerがAcrobat.comのWebアプリになっていたのは初耳で、びっくりしました。デモを見る限りでは、InDesignからデータをサーバにアップしてWeb画面上で設定をするようですが、あまり使い勝手がよさそうではありませんでした。

最終的なデータの扱いが見る限りではよくわからなかったのですが、ベータ版のように.folioファイル(以前は.issue)を取り出せないというようなことを言われていたので、デバイスへのコピーもオンライン経由しかできないのかもしれません。

最後にサービス価格の説明があったときに会場のいたるところで苦笑の声が聞こえたのは気のせいでしょうか…。

個人的にはCS5.5およびADPS価格発表後はちょっと関心が薄れつつあり、最近はEPUB関連を調べていたのですが、CS5.5ではEPUB関連の機能はかなり改善されており、HTML部分の書き出し性能はそこそこいいようです。CSSはまだまだみたいですけど…。

Adobe Digital Publishing Suite価格決定?

Adobeのサイトにはまだ詳細がないみたいですけど、cnetの記事はプレスリリースなのでしょうか

それによるとProfessional Editionは、月額使用料50,000円(要12ヶ月契約)+サービス利用料金ということで、サービス利用料金は発行部数によって下記のようになるそうです。

刊行部数カウント数 ダウンロード毎単価 サービス利用料金
25,000 25円 625,000円
250,000 17円 4,250,000円
500,000 14円 7,000,000円

最低でも50,000×12=60万円は年間固定費として予算立てした上で、1部売れるたびに25円(25,000部までの場合)のコストを考えないといけないということですかね。これって雑誌自体の金額に関係ないってことなんでしょうか? そうするとフリーペーパーとかでは厳しいですね(他の雑誌にコストを乗せる?)。しかもApp Storeの場合さらにAppleにも抜かれるわけで(ですよね?)、利益あげるのは相当厳しい気がしますけど…。

部数が多くなれば利用料金は下がるようですが、一つの雑誌での販売部数なんてたかが知れてるでしょうから、どうしても雑誌の種類を増やすしかないでしょう。
契約対象としては大手の出版社か、凸版大日本のような大手の印刷会社あたりなのでしょう。そうなると大手の印刷会社が中小の(単体ではコストが高く参入できないような)出版社を取り込むという流れが予測されて、なんというかイヤな感じです。

なんというかもう少し規模の小さい、個人でも気軽に参加できるようなものであってほしい気がします。そこに期待してAPDSの情報追っかけていた人もそれなりにいると思います。それとも課金システムを無視すれば、個人で.folioファイル作成して自由に配布できるようになるのでしょうか?

Adobe Creative Suite 5.5

Adobe Creative Suite 5.5が発表になりました。これまでAcrobatの新バージョンを追加したCSx.3というのはありましたが、アプリの一部のみがバージョンアップしたということで、PhotoshopIllustratorはCS5のままということですね。

ラインナップが複雑すぎるのは相変わらずですが、さらにサブスクリプション形式もでてきて何が何やら…。

ざっとみただけで気になった点は


CS5からのアップグレードもけっこう高額

CS5が出たのちょうど1年前で、そこでアップグレードした人はちょっと厳しいんじゃないでしょうか。Design StandardなんかInDesignしかバージョンアップしていないのに48,000円もするのはどうなんだという気もします。

追記:Acrobatも9からXにバージョンアップしますね


ADPSの対応は?

各ソフトの新機能に関してはまだよく確認していませんが、気になるのはInDesignでのDigital Publishing Suiteの対応に関して。InDesignの機能紹介をみると、「Folio Producerツール」という記述がありましたが、これがAPDSの作成ツールということなのでしょうか。リンク先のムービー表示されないんですけど…。その隣に「Adobe Digital Publishing Suiteにアクセス」というのがあるということは、APDSホスティングサービスに限った名称にするということでしょうか。

EPUBの書き出し機能も向上しているのかな?

問題はこれらの機能がCS5で提供されるのかどうかですね。CS5.5以降だけに限定されると普及するのは厳しい気がします。
たしかセミナーとかでアドビの岩本氏がAPDSの紹介をする際に「CS5以降でしか使えないのでアップグレードしてくださいね」って言っていたような気がしますけど(ムービー再確認してみようか)、あれを聞いて急いでCS5にアップグレードした人は涙目だよなぁ。


CS6へのアップグレードは?

ITmediaによると

同社のクリエイティブ製品はこれまで18カ月ごとにメジャーアップデートを繰り返してきたが、「間隔が早過ぎるという声と、最新機能を使いたいという両方の声があった」という。このため、今後はメジャーアップデートを24カ月間隔とする一方、市場のトレンドとニーズに合わせた中間アップデートを併用する形にしていく。

とあり、今回のCS5.5が「中間アップデート」だとすると、CS5からCS6まで24ヶ月、つまり来年の今頃にはCS6が出るということですね。そしてその翌年にはCS6.5が出ると…。「間隔が早過ぎる」ってさらに早くなってるやん。
これはサブスクリプションに移行させたいってことなのでしょうかね。

さすがに勤務先でアップグレードするのは厳しいかな。せめてInDesignのデジタルパブリッシング系の新機能はCS5でも使えるようにしてほしい…

Adobe Content Viewerバージョンアップ

ちょっと前になりますが、Adobe Content Viewerがバージョンアップして1.5.0になっています。

バージョンアップ内容は、

Localized for Spanish, German, Japanese, French, and Swedish.
Pinch & Zoom support for PDF generated content.
Bug fixes related to application upgrades.

だそうです。メニューなどが日本語表示されるようになりました。

ちなみにこのバージョンからアイコン代わったようですね。

旧アイコン 新アイコン