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overprint

印刷とそれ以上の何かについて(少し電子書籍寄り)。気が向いただけでは更新されません。

Adobe Digital Publishing フォーラム 2011

(昨日寝落ちしてしまったので一日遅れでアップ)

Adobe Digital Publishing フォーラム 2011に参加するために六本木まで行ってきました。たしかこの会場ってCS4の発表会のときに来たような…。開始20分前くらいには満席になって立ち見も出てたようです。ustreamでも中継してたんですね。

Keynote:米国最新事例を交えたAdobe Digital Publishing Suiteのご紹介

Adobe Digital Publishing Suiteのざっくりした紹介と海外事例。最新事例というわりにはWIREDとマーサスチュワートリビングの事例はいつも紹介されてる気がする…。
サービス概要も特に新しい発表もなかったですかね。国内向けの料金発表くらいするかと思ってたのですが、それもありませんでしたし。
英語の同時通訳でなぜかopportunityをそのまま「オポチュニティ」で通していたのが気になってしかたなかった。

Adobe Digital Publishing Suiteによる国内作例の紹介

アドビ岩本氏司会で国内事例の紹介。

・株式会社ビーワークス/株式会社三栄書房『ゴルフトゥデイ』

eBookジャーナルの2号でも紹介されてた「ゴルフトゥデイ」。AppStoreで昨日配信開始で、1位になったとか。電子書籍で1位かと思ったら、スポーツカテゴリで1位なんですね。ブックカテゴリ探しても出てこなかった…。
ムービーがやたら入っていて、ゴルフ好きにはすごくうれしいんでしょうね(当方ゴルフ興味なし)。スイング解説でスイングの動きをムービーではなく静止画のスライドショーを使って切り替えてみせるというのはおもしろいアイデアだと思いました(指をスライドさせてコマ送り)。

凸版印刷株式会社/株式会社集英社『ヤングジャンプ(サンプル)』

凸版の権力行動力で集英社と組んだヤングジャンプのアイドル写真集サンプル。このサンプルを紹介してる間は大人の事情でust中継では画面表示はなかったらしい。
まあありがちといえばありがちなサンプルですけど、やっぱりコンテンツが大事ということで。
集英社担当者のコメントとして、素材をたくさん盛り込もうとして作品全体の軸(中心線という言葉を使っていた)がぶれそうになったという言葉が印象的でした。また凸版の「社内にいっぱいいるInDesignオペレータを充てられる」というのもよく考えるとすごい話だ。なんでも週に4、50件ほど新規案件があるらしい。そして売上目標500億って…

・DESIGN WORKS『電子カタログのサンプル作成事例』

CELL REGZAやメルセデス・ベンツSMARTのカタログをADPSを使ってデジタル化。いろいろ仕掛けを加えてました(たいへんそう…)。これは実際に採用されているわけではなく、プレゼン用サンプルなのでしょうか? 展示会場で配ってた元のカタログ印刷物も相当コストかかってそうな感じでした。印刷でしか表現できない質感などが与える高級感を、デジタルにしたときにどのようなアプローチで表現するかというのが課題になりそうな気がします。動画入れてリッチコンテンツにすりゃいいって話でもないでしょうし。

ディアゴスティーニ「週刊 戦国甲冑をつくる」

…なんで戦国甲冑? サンプルなんでしょうけど素材としてのインパクトはありますね。くるくる回る甲冑(笑)。
こういう付録メインの書籍の場合は、印刷とデジタルで部数を食い合うことも少ないでしょうから有用性は高いかもしれません。個人的には「デザインの引き出し」の資料として便利な記事だけを集めてデジタル化してほしいです。あの雑誌は素材サンプルのおかげで記事部分が読みづらいことがあるので。

・株式会社ロータスエイト『ヘッドポーター カタログ』

国内最初の採用事例。まあADPSに興味がある人は既にみんなダウンロードしてそうな気がしますが。制作したロータスエイトはヨガ教室もやってる編集プロダクションで、実制作したのはモデルもやってるイケメンさん。この方それまでほとんどInDesign使ってなかったらしい。

ゲスト:株式会社STUDIO ellie 大宮エリー氏

事例ではなく、「電子書籍ってなんだか面白そうなので作るよ!」と発表しただけ(というと失礼か)。でも「面白そう」から実際に作るまでの行動力は純粋にすごいと思います。スポンサー集めたりとか。
ここで北川一成氏と組んでやるというのは興味あります。北川氏って印刷のすごい人って印象だったので、電子書籍でどういうことやるのでしょうか(知らないだけでもう何か手がけていたりするのかも)。

電子書籍の新フォーマット、日本語対応EPUB3.0の詳細解説

EPUB規格策定に深く関わっておられる村田真氏による解説。個人的には村田氏といえばゼロックスの肩書きでお名前をよく拝見していたのですが(XMLとかRELAX NGとかの頃?)、今は国際大学フェローという肩書きなのか…。国際大学ということはGLOCOM?
内容についてはEPUBの概要紹介、採用事例、EPUB3.0の進行状況など多岐にわたるものでしたが、前段が具体的な事例のデモンストレーションだったのに対して、淡々としたプレゼンだったせいか、このあたりから少し人が減った気がしました。来場者層が具体的にはわかりませんが、もう少し具体的で実務寄りなのを期待していた人たちが多かったのかもしれません。国際規格の提案の進め方とか裏話も聞いてると面白いんですがねぇ…。どちらかといえばPAGEのカンファレンスでやったほうが、必要としている人に届いていたような気もします(それだとust中継されないからダメか)。
個人的に気になったのは、採用事例としてYahoo!コミックが挙げられていたところでしょうか。ユーザが直接EPUBデータにアクセスできるのかどうかわかりませんが、画像メインの場合でもEPUBが有用性があるのでしょうか。
最後に岩本氏が解説で、EPUB規格がアドビの独自規格だと誤解されている人がいるのでオープンな規格であることを知ってもらうためにこのセッションを企画したこと、アドビとしてはEPUB3.0にも注力し、文字ものにはEPUB、リッチコンテンツにはADPSを推進していくということを補足されました。

ワクワクする電子書籍

村上龍氏の電子書籍を手がける株式会社G2010 代表取締役社長 船山浩平氏のセッション。「歌うクジラ」の紹介や製作裏話、今後の展開など。
文芸書籍のデジタル化は作家や編集者や読者も含めて求めているものが十人十色なので、理想の電子書籍というものを示すのは難しいんでしょうけど、作家主導で進めていけるものは一番幸せなものなんでしょうね(少なくとも作家と作品にとっては)。
興味深かったのは外注製作分が150万で、それをペイした後の利益配分がApple 30%、村上龍氏 40%、G2010 20%、坂本龍一氏 10%というところ。音楽も固定じゃないのか。しかもApple以外の比率は売上数に応じて多少変わるようなことも…。作品が増えてきたら個別に契約調整するの大変だろうから一定の基準に落ち着くかもしれないともおっしゃっていました。

展示会場

展示ブースでは、事例紹介でデモをされていた作品やその他製作ツールなども展示されていました。ADPSの競合にあたるWoodwingとかProBridgeDesignerとかも出展してました。その他プレゼンでは紹介されていなかったamanaの電子雑誌も凝ってる感じでした。

まとめ

なんだかんだでけっこう長時間のイベントでしたが、全体として何か目新しい発表をしたわけでもなくADPS推しというわけでもなく、焦点が定まらないぼんやりしたイベントだったと思います。もしかしたら最初はこの場で国内向けサービスを価格も含め正式発表したかったのかもしれませんが。少なくとも相当の人が知りたいであろう「どうやって作るのか」という説明を、休憩時間の15分ほどのデモで済ませるというのはどうなんでしょう。これならADOBE DIGIPUB MAGAZINEにある報道関係者向け説明会のビデオのほうが詳しいんじゃないでしょうか。

参考:Togetter - 「「Adobe Digital Publishing Forum 2011」のツイートまとめ (2011.2.1)」
http://togetter.com/li/95587

おまけ

イベント参加記念グッズはiPadと同サイズのノート。デザインラフを作るのに便利かも。

…アドビからInDesignCS5の割引クーポンが送られてきた。アドビもこういうプロモーションをできるようになったのか。